1.はじめに
相続税は、多くの家庭にとって大きな負担となることがあります。特に、障がい者のお子様を持つ親にとっては、相続税対策が重要な検討事項となります。
障がい者は遺産分割協議に参加できないことから、家族信託が相続計画において強力な道具となります。本記事では、障がいのあるお子様を持つ親御さんが直面する課題と、家族信託によるメリットを解説いたします。
2.遺産分割協議と障がい者
障がいを持つお子様を育てる親が最初に直面する問題は、遺産分割協議への制約です。障がい者は法的に成年と見なされる場合でも、判断能力が不足していることがあり、遺産分割協議に参加できない場合があります。これが、相続の複雑さを増す一因です。
3.親の認知症や死亡に備える
親が認知症になったり、亡くなったりすると、障がい者のケアと財産管理が大きな課題となります。障がい者の生活には周囲のサポートが必要であり、財産管理者の選定や財産の適切な使途の確保が求められます。そのため、親である自分に何かあったときのことを考えて、対策を検討している方も多いと思います。
4.「家族信託」という選択肢
家族信託とは、信託契約を通じて設立され、信託財産を管理・運用するための仕組みです。この信託の特徴は、信託財産が受益者(障がい者のお子さん)のために管理され、運用されることです。
5.家族信託のメリット
次に、家族信託が相続税対策にどのように役立つかについて説明します。特に、障がいのあるお子様を持つ親にとって以下のようなメリットがあります。
①相続税対策
家族信託を活用することで、相続税の負担を軽減できます。信託財産は信託として管理され、相続財産から除外されるため、相続税の対象外となります。
②受益者の安心
障がいのあるお子様が受益者である場合、信託によって資産が守られ、将来の生活が安定します。信託財産は受託者によって適切に管理され、受益者の生活や福祉のために利用されます。
③遺産の効果的な管理
家族信託は、遺産の効果的な管理を可能にします。信託契約には資産の使途に関する指示が含まれ、遺産が適切に活用されることが保証されます。
6.注意すべき「30年ルール」
家族信託では、現在の受託者が亡くなった後の受託者(第2受託者)、その受託者に万一のことがあった場合はその次の受託者(第3受託者)と、受託者を連続して設定することが可能です。第2・第3受託者まで決めておくことで、障がいを持つお子様を将来にわたってサポートできる体制を構築することができます。
しかし、信託を設定した時から30年を経過した後に、新たに受益者となった人が死亡した場合には、その時点で信託は終了します。設定するタイミングが非常に重要になりますので、計画的に設定する必要があります。
7.受託者が正しく信託財産を管理してくれる保証はあるの?
考えたくはないですが、受託者に設定した人間が信託財産を着服してしまう可能性もないとは言えません。そのような悲しいことが起こらないように「信託監督人」という制度が用意されています。
信託監督人とは、受託者が契約内容に従って正しく財産管理を行っているかを確認する人であり、通常は法律家などの専門家に依頼する場合が多いです。
8.「成年後見制度」との違いとは?
障がいを持つお子様がいる場合、「成年後見制度」という制度を検討されることがあるかと存じます。家族信託と似ている部分もあるため、「どちらの制度がいいの?」と悩まれる人も多いと思います。成年後見制度と家族信託の主な違いは、「身上監護権の有無」と「管理する財産の範囲」です。
①身上監護権とは
身上監護権とは、成年後見人が成年被後見人の心身の状態や生活の状況に配慮して、生活や健康、療養等に関する法律行為を行うことを言います。
成年後見制度には身上監護権があるため、生活費などの財産だけに限らず、生活に必要な手続きまで面倒を見てもらうことができます。
一方、家族信託には身上監護権がないため、面倒を見てもらえるのは財産の管理までになります。
②管理する財産の範囲
身上監護権の有無だけを考えると成年後見制度の方が良いように思えますが、家族信託を選ぶメリットもあります。
それは、成年後見制度はすべての財産を一括で管理する形になりますが、家族信託は一部の財産だけを信託財産として管理してもらうことができます。
また、成年後見制度ではあくまで財産を守ることが仕事となるため、積極的な運用はできないというデメリットがあります。
③家族信託と成年後見制度を併用することは出来ないの?
家族信託は財産管理に長けている、成年後見制度は生活のサポートに長けている。それなら2つの制度を併用して、財産管理は家族信託を活用し、生活のサポートは成年後見制度を利用できないか?と考えたくなると思います。もちろん、この2つの制度を併用することも可能です。
9.家族信託を設立するためには?
必ずしも専門家に依頼する必要はありませんが、先ほど述べたようにメリットデメリットがある制度になりますので、専門家に依頼する場合がほとんどです。
お子様のためにも、正しい知識を持ち、最適な方法を提案してくれる専門家を探すことが大事になります。
少しでも家族信託にご興味のある人は、ぜひ一度無料相談をご利用ください。
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