相続の種類とは?単純承認・限定承認・相続放棄の違いを徹底比較
- サポートセンター 相続
- 4月13日
- 読了時間: 7分
更新日:4月13日

大切な方が亡くなられた際、その方の財産を受け継ぐ手続きである「相続」には、実は3つの異なる方法があることをご存知でしょうか?それは、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」です。
初めて相続に直面する方にとっては、それぞれの違いや、どのような場合にどの方法を選ぶべきか、迷ってしまうこともあるでしょう。
この記事では、この3つの相続方法について、その内容、メリット・デメリット、そしてどのような状況で選択すべきかを徹底的に比較解説します。ご自身の状況に合わせて、最適な選択をするための参考にしてください。
1. 相続方法の基本~3つの選択肢~
相続が発生した場合、相続人は故人の財産をそのまま引き継ぐか、一定の条件のもとで引き継ぐか、または一切引き継がないかを選ぶことができます。この選択肢が、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つです。
これらの選択は、原則として相続の開始を知った時から3ヶ月以内に行う必要があります。この期間を「熟慮期間」といい、相続人は故人の財産状況を把握し、どの方法を選択するかを慎重に検討します。
2. 単純承認~全ての財産を無条件で引き継ぐ~
単純承認とは、故人のプラスの財産(預貯金、不動産、有価証券など)だけでなく、マイナスの財産(借金、ローンなど)もすべて無条件で引き継ぐ方法です。
単純承認のメリット
手続きが比較的簡単で、特別な申立てなどは原則として不要です。
故人の財産を全面的に活用することができます。
単純承認のデメリット
マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合でも、その借金などをすべて引き継がなければなりません。
後から多額の借金が見つかったとしても、原則として単純承認の撤回はできません。
こんな場合に単純承認を選ぶ
故人の財産状況が明確で、プラスの財産がマイナスの財産を大幅に上回ることが分かっている場合。
故人の事業や家業を承継する場合など、積極的に財産を引き継ぎたい場合。
熟慮期間内に相続放棄などの手続きを行わなかった場合(法定単純承認)。
3. 限定承認~プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ~
限定承認とは、相続によって得たプラスの財産の範囲内で、故人の借金などのマイナスの財産を弁済する方法です。もしプラスの財産がマイナスの財産よりも少なかった場合、相続人は自分の財産から借金を支払う必要はありません。
限定承認のメリット
相続財産の範囲内で責任を負うため、自身の財産を守ることができます。
故人の財産の中にどうしても手放したくないものがある場合に、それを残せる可能性があります。
限定承認のデメリット
手続きが複雑で、家庭裁判所への申立てや、相続財産の目録作成などが必要となります。
相続人全員が共同で行う必要があり、一人でも反対する相続人がいる場合は選択できません。
相続財産の清算手続きに時間がかかることがあります。
こんな場合に限定承認を選ぶ
故人の財産状況が不明で、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか判断できない場合。
故人の財産の中にどうしても残したい特定の財産がある場合。
相続人同士の協力が得られる場合。
限定承認の手続きの流れ(概要)
相続の開始を知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所に限定承認の申述書を提出します。
相続人全員で相続財産の目録を作成し、家庭裁判所に提出します。
家庭裁判所が選任した相続財産管理人によって、相続財産の清算手続きが行われます。
4. 相続放棄 ~一切の財産を引き継がない~
相続放棄とは、故人のプラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がないという選択です。相続放棄をすると、その相続人は最初から相続人ではなかったものとみなされます。
相続放棄のメリット
故人の借金などのマイナスの財産を引き継ぐ必要がなくなります。
相続に関する煩雑な手続きから解放されます。
相続放棄のデメリット
故人のプラスの財産も一切受け取ることができなくなります。
一度相続放棄をすると、原則として撤回はできません。
相続放棄をした場合、次の順位の相続人に相続権が移ります。
こんな場合に相続放棄を選ぶ
故人のマイナスの財産が明らかにプラスの財産を上回る場合。
故人との関係性などから、一切の財産を引き継ぎたくない場合。
他の相続人に全ての財産を相続させたい場合。
相続放棄の手続きの流れ
相続の開始を知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出します。
申述書には、故人の戸籍謄本や住民票の除票、相続放棄をする方の戸籍謄本など、必要な書類を添付します。
家庭裁判所での審理を経て、相続放棄が認められると、相続放棄申述受理通知書が送られてきます。
5. 3つの相続方法の違いを比較表で確認
項目 | 単純承認 | 限定承認 | 相続放棄 |
内容 | 全ての財産を無条件で承継 | プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を承継 | 全ての財産を承継しない |
メリット | 手続きが比較的簡単、財産を全面的に活用できる | 自身の財産を守れる、特定の財産を残せる可能性 | マイナスの財産を引き継ぐ必要がない、手続きが簡便 |
デメリット | マイナスの財産も全て引き継ぐ | 手続きが複雑、相続人全員の同意が必要 | プラスの財産も一切受け取れない、原則撤回不可 |
手続き | 原則不要 | 家庭裁判所への申立て、財産目録の作成など | 家庭裁判所への申立て |
選択期限 | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
こんな場合に | プラスの財産が多い場合、事業承継など | 財産状況が不明な場合、特定の財産を残したい場合 | マイナスの財産が多い場合、相続に関わりたくない場合 |
6. 選択の期限と注意点
どの相続方法を選ぶにしても、原則として相続の開始を知った時から3ヶ月以内という期限があります。この期間内に何も手続きを行わなかった場合、単純承認をしたものとみなされることがありますので注意が必要です。
もし、3ヶ月以内に財産状況を十分に把握できないなどの理由がある場合は、家庭裁判所に申し立てることで、熟慮期間を延長してもらうことができる場合があります。
まとめ ~最適な選択をするために~
相続には、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」という3つの方法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。ご自身の状況や故人の財産状況をしっかりと把握し、慎重に検討することが大切です。
もし、どの方法を選ぶべきか迷ったり、手続きについて不安を感じたりした場合は、専門家である弁護士や司法書士、そして私たち行政書士にご相談ください。適切なアドバイスとサポートで、お客様が安心して相続手続きを進められるようお手伝いさせていただきます。
東京・神奈川で遺言書の作成・相続のお手続きをお考えの方は、
横浜にある相続遺言執行センターへご相談ください。
【この記事のポイント】
相続には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つの選択肢がある。
単純承認は全ての財産を無条件で引き継ぐ方法。
限定承認はプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ方法。
相続放棄は一切の財産を引き継がない方法。
それぞれの方法にはメリットとデメリットがあり、状況に応じて最適な選択をする必要がある。
選択の期限は原則として相続開始を知った時から3ヶ月以内。
判断に迷う場合は専門家に相談することが重要。
※この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別のケースについては専門家にご相談ください。
Komen